
しかし、Google Cloudはアカウントを作成してサーバーを移行すれば完了するものではありません。
導入前の現状分析、要件定義、クラウド設計、移行、テスト、本番リリース、そして継続的な運用・改善まで、複数の工程を計画的に進める必要があります。
本記事では、Google Cloud導入から運用までの一般的な流れを、企業が実際にプロジェクトを進める際のポイントとともに解説します。
Google Cloudとは?
Google Cloudは、Googleが提供するクラウドコンピューティングプラットフォームです。
コンピューティング、データベース、ストレージ、ネットワーク、AI・機械学習、データ分析、コンテナなど、企業システムの構築・運用に必要となる幅広いサービスを利用できます。
Google Cloudへの移行では、単純に既存サーバーをクラウド上へ移すだけでなく、システムの特性や事業要件に応じて、クラウドネイティブな構成へ変更することも可能です。
Google Cloudの公式ドキュメントでも、移行プロセスは「現状の評価」「基盤構築」「ワークロードの移行」「最適化」といった段階的なアプローチが推奨されています。
Google Cloud導入の基本的な流れ
企業がGoogle Cloudを導入する場合、一般的には以下のような流れで進めます。
現状分析
↓
要件定義・移行計画
↓
Google Cloud環境構築
↓
アーキテクチャ設計
↓
システム・データ移行
↓
テスト・検証
↓
本番リリース
↓
監視・運用・改善
重要なのは、「導入」をゴールにしないことです。
クラウド環境は本番稼働後も、コスト、セキュリティ、パフォーマンス、可用性などを継続的に確認し、改善していく必要があります。
STEP1:導入目的と現状環境を整理する
Google Cloud導入で最初に行うべきことは、技術選定ではありません。
まず、なぜGoogle Cloudを導入するのかを明確にします。
例えば、以下のような目的が考えられます。
- オンプレミスサーバーを廃止したい
- インフラ運用コストを削減したい
- システムの可用性を高めたい
- アクセス増加に柔軟に対応したい
- 開発・リリースを高速化したい
- AI・機械学習を導入したい
- データ分析基盤を構築したい
- 海外展開に対応できるインフラを構築したい
次に、現在のシステム環境を調査します。
サーバー、データベース、ネットワーク、アプリケーション、外部サービス、データ容量、アクセス数などを整理し、Google Cloudへ移行する対象と対象外を明確にします。
特に古いシステムでは、設計書や運用手順書が十分に残っていないケースもあります。その場合は、現在のシステム構成を可視化するところから始めることが重要です。
STEP2:要件定義・移行計画を策定する
現状分析が完了したら、Google Cloud上でどのような環境を構築するのかを決めます。
ここでは、以下の項目を整理します。
- 機能要件
- 非機能要件
- セキュリティ要件
- 可用性要件
- 性能要件
- データ移行要件
- 運用要件
- バックアップ・災害対策
- 予算・コスト要件
また、すべてのシステムを一度に移行するのではなく、優先順位を設定することも重要です。
例えば、まず開発環境や比較的影響の少ないシステムを移行し、その結果を確認したうえで重要な本番システムを移行する方法があります。
Google Cloudでは、企業のクラウド導入成熟度を評価するための「Google Cloud Adoption Framework」も提供されています。組織のスキル、リーダーシップ、拡張性、セキュリティなどを確認しながら、クラウド導入のロードマップを検討できます。
STEP3:Google Cloudの基本環境を構築する
計画が決まったら、Google Cloudの基盤環境を構築します。
代表的な作業には以下があります。
- Google Cloudプロジェクトの設計
- IAM・権限設計
- ネットワーク設計
- VPC設定
- サブネット設計
- セキュリティ設定
- ログ・監視環境の準備
- バックアップ環境の構築
- 開発・ステージング・本番環境の分離
特に重要なのが権限管理とセキュリティ設計です。
「誰が」「どのリソースに」「どこまでアクセスできるのか」を明確にし、必要以上の権限を付与しない設計を行います。
また、開発環境と本番環境を適切に分離することで、開発中の操作が本番環境へ影響するリスクを抑えられます。
STEP4:クラウドアーキテクチャを設計する
次に、Google Cloud上で実際にシステムをどのように構成するのかを設計します。
例えば、Webシステムであれば、
ユーザー
↓
ロードバランサー
↓
アプリケーション
↓
データベース
↓
ストレージ
といった構成を検討します。
どのGoogle Cloudサービスを利用するかは、システムの要件によって異なります。
Compute Engine、Google Kubernetes Engine(GKE)、Cloud Run、Cloud SQL、Cloud Storage、BigQueryなど、多数の選択肢から適切なサービスを組み合わせる必要があります。
ここで重要なのは、単に「高機能なサービスを選ぶ」ことではありません。
必要な性能・可用性・セキュリティ・運用負荷・コストのバランスを考えることが重要です。
Google CloudのWell-Architected Frameworkでも、セキュリティ、信頼性、運用効率、コスト、パフォーマンスなどを考慮してクラウド環境を設計・運用することが推奨されています。
STEP5:アプリケーション・データを移行する
アーキテクチャが決定したら、実際のシステムとデータをGoogle Cloudへ移行します。
移行方式には複数の選択肢があります。
リフト&シフト
既存システムを大きく変更せず、そのままクラウドへ移行する方法です。
比較的短期間で移行しやすい一方、クラウドのメリットを十分に活用できない場合があります。
リプラットフォーム
アプリケーションの基本構造は維持しながら、データベースや実行環境などをクラウド向けに変更する方法です。
リファクタリング
アプリケーション自体を大きく変更し、クラウドネイティブなシステムとして再構築する方法です。
初期開発の負担は大きくなりますが、将来的なスケーラビリティや運用効率を高めやすいというメリットがあります。
どの方式を採用するかは、システムの重要度、予算、納期、既存コードの状態、将来的な事業計画などを考慮して判断します。
STEP6:テストと動作検証を行う
移行が完了したら、本番環境へリリースする前に十分なテストを行います。
代表的なテストには以下があります。
- 機能テスト
- 性能テスト
- 負荷テスト
- セキュリティテスト
- 障害テスト
- データ整合性テスト
- バックアップ・復旧テスト
- ネットワークテスト
特に重要なのが、旧環境とGoogle Cloud環境でデータや処理結果に差異がないかを確認することです。
また、アクセス集中時のパフォーマンスや障害発生時の復旧手順についても、本番稼働前に確認しておく必要があります。
STEP7:本番環境へ移行する
テストが完了したら、本番環境への切り替えを行います。
本番移行では、事前に詳細な切り替え手順を作成します。
例えば、
- 旧システムのバックアップ
- データ同期
- 最終データ確認
- Google Cloud環境への切り替え
- アプリケーション動作確認
- 外部システムとの接続確認
- ユーザーアクセス確認
- 監視開始
といった流れです。
また、万が一問題が発生した場合に備えて、ロールバック手順を準備しておくことも重要です。
STEP8:運用・監視・コスト最適化を行う
Google Cloudの導入は、本番リリースで終わりではありません。
むしろ、本番稼働後の運用が長期的な成功を左右します。
Google CloudのWell-Architected Frameworkでは、運用面において、監視、インシデント対応、キャパシティ計画、リソース最適化、自動化、継続的改善などが重要な要素として挙げられています。
具体的には、以下のような運用を行います。
監視
CPU、メモリ、ネットワーク、レスポンスタイム、エラー率などを監視します。
障害対応
アラート発生時の通知方法や担当者、対応手順をあらかじめ決めておきます。
セキュリティ管理
アクセス権限、ログ、脆弱性、認証設定などを定期的に確認します。
コスト管理
不要なリソースを削除したり、適切なスペックへ変更したりすることで、クラウドコストを最適化します。
Google Cloudでは、利用状況の確認や予算・アラートなどのコスト管理機能も提供されています。
継続的な改善
システムの利用状況やユーザーからのフィードバックを分析し、性能、セキュリティ、コスト、ユーザビリティなどを継続的に改善します。
Google Cloud導入で注意したい5つのポイント
1. 「とりあえず移行する」を避ける
クラウドへ移行すること自体を目的にすると、期待した効果を得られない可能性があります。
まず「何を改善したいのか」を明確にしましょう。
2. 現行システムを正確に把握する
依存関係や外部システムとの連携を把握しないまま移行すると、本番環境で予期せぬ問題が発生する可能性があります。
3. セキュリティを後回しにしない
クラウドでは、インフラだけでなく、アカウント、IAM、データ、アプリケーションなどのセキュリティを総合的に考える必要があります。
4. 運用設計を導入前から考える
監視、障害対応、バックアップ、アップデート、権限管理などを後から考えるのではなく、設計段階から運用を考慮することが重要です。
5. コストを継続的に確認する
クラウドは使った分だけ料金が発生するサービスが多いため、利用状況を定期的に確認し、不要なリソースや過剰なスペックがないか確認しましょう。
Google Cloud導入は「移行」ではなく「継続的な改善」が重要
Google Cloud導入を成功させるためには、
計画 → 設計 → 構築 → 移行 → テスト → 本番稼働 → 運用 → 改善
という一連のプロセスを一貫して考えることが重要です。
特に既存システムをオンプレミスからGoogle Cloudへ移行する場合、システム規模が大きくなるほど、単純なサーバー移行だけでは対応できないケースが増えてきます。
そのため、インフラだけではなく、アプリケーション開発、データベース、ネットワーク、セキュリティ、DevOpsなどを横断的に理解できる体制が重要になります。
Google Cloudの導入を検討している企業は、まず現在のシステム環境と課題を整理し、自社に適した移行方式とロードマップを策定することから始めるとよいでしょう。
Google Cloudは、単なるインフラの置き換えではなく、システム開発・運用の効率化や、データ活用、AI活用など、企業のIT戦略そのものを変える可能性を持っています。
まとめ
本記事では、Google Cloud導入から運用までの一般的な流れを解説しました。
主な工程をまとめると、以下の8ステップです。
- 導入目的・現状環境の整理
- 要件定義・移行計画の策定
- Google Cloudの基盤環境構築
- クラウドアーキテクチャ設計
- アプリケーション・データ移行
- テスト・動作検証
- 本番環境への移行
- 監視・運用・コスト最適化
Google Cloudの導入では、技術そのものだけでなく、プロジェクト管理、セキュリティ、運用体制、コスト管理まで含めた総合的な設計が求められます。
自社だけでの対応が難しい場合には、Google Cloudに関する知識やクラウド開発経験を持つエンジニア・開発パートナーを活用することも選択肢の一つです。
Google Cloudを活用して、より柔軟で安全性・拡張性の高いシステム環境を構築していきましょう。
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